以前に文章の形について書きました。
文章の書き方、特に文章を書くときの形式・フォーマットについての2つの考え方(演繹法と帰納法)について書きます。
今回は、もう少し具体的に、文章の形について書いていきますね。特にビジネス文章を書くときに役に立つと思います。もちろん、ビジネス文章以外でも役に立つ内容でもあります。
池上彰さんの著書『伝える力』の内容を用いつつ、ほかのサイトの記事も参考にして書いていきます。
演繹法と帰納法の違いとは?
今回は文章を書くときに形を決めることについて書いていきます。この時に、論理学の考え方である演繹法と帰納法というものを使って考えていきます。
この記事では、この2つの考え方をふんだんに使っていきますので、まずは演繹法と帰納法の2つの考え方について説明していきますね。
演繹法とは?
まずは演繹法から説明していきますね。
演繹法とは一つの一般論・結論を先に述べて前提として具体的な結論を導く方法です。
「演繹法」は,ルール(大前提)から結論を導き出す思考の経路です。
演繹法は、「××だから、○○である」という論理を数珠つなぎにしていき、結論を引き出す方法です。
帰納法に演繹法?ロジカルシンキングの3つの手法とはより
このように述べても今一つわからないと思うので、具体例を上げておきます。まず、以下の内容はアリストテレスの3段論法と呼ばれるものです。これは代表的な演繹法です。
大前提: すべての人間は死すべきものである
小前提: ソクラテスは人間である
結論: ゆえにソクラテスは死すべきものである
帰納法に演繹法?ロジカルシンキングの3つの手法とはより
このほかにもいくつか例があったので紹介しておきますね。
たとえばこんな感じです。
野菜は栄養がある。にんじんは野菜だ。だから、にんじんは栄養がある。
あるいは
ポルシェは高い。高いものは金持ちしか買えない。だから所得の少ない人はポルシェに乗らない。
あるいは
ポルシェは高い。高いものは金持ちしか買えない。だからセルシオに乗っている人も金持ちだ。
というように展開していきます。だから三段論法とも呼ばれます。
演繹法と帰納法より
演繹法は先に結論ありきで話が進むので話の展開がわかりやすいです。
ただし、先に結論を述べるので、間違った前提、思い込み、一部分しか正しくないことを最初に示すと話がおかしくなってしまうという問題点もあります。
身近な反面、落とし穴もあります。注意しないと論理の飛躍が起きやすかったり、論理が長くなりがちで「屁理屈」のように聞こえることがあります。
演繹法の欠点は、正しくない、あるいは使用するのが適切ではない前提を用いてしまうことがあることです。
先入観や偏見に基づいた間違った前提を適用してしまう場合や、ある限定された範囲でのみ正しい前提を全体に適用してしまうような場合などがそれにあたります。
帰納法とは?
続いて帰納法について説明します。帰納法とは演繹法と逆の方向で結論を導きます。ちょっと意味が分からないかもしれませんね。もっとわかりやすく言うと…
帰納法は、多くの観察事項(事実)から類似点をまとめ上げることで、結論を引き出すという論法です。
帰納法に演繹法?ロジカルシンキングの3つの手法とはより
「帰納法」は、多くの具体的な事項から、共通性やルール(大前提)を導き出す思考の経路です。演繹法と同様具体例を挙げておきますね。
「ジャイアンは昨日僕を殴った」
「ジャイアンは去年も僕を殴った」
結論「ジャイアンは今日も僕を殴る。もうジャイアンは毎日僕を殴る。助けてよドラえもん。」
となります。この考え方の問題点は全て上げるというのは難しいということです。
帰納法では「納得感」が大事です。観察事項が適切でなかったり、少ない観察事項からむりやり結論を引き出そうとすると、「納得感に欠けてしまう」ことがあります。
帰納法の欠点は、全事例を網羅するか、それと同等の論理証明をしない限り、帰納した結論(帰結)は必ずしも確実な真理ではなく、ある程度の確率を持ったものに過ぎないことです。(故に帰納法は帰納的推理ともいいます)
事例の集合が不完全である限り、いくら事例をあげても、それは正しい確率が高いものにしかなりません。
全知全能ではない人間の認識の限界が帰納法の欠点となります。
演繹法と帰納法では考え方の方向が逆
演繹法と帰納法の違いは何かと聞かれれば、「演繹法と帰納法は考え方の向きが逆」だといえます。
それぞれの思考のベクトルが逆になっている点に着目して下さい。
・演繹法:「一般論」→「事象A」→「結論」
・帰納法:「事象A」「事象B」「事象C」→「結論(一般論)」
複合的な論理展開 その1より
伝える力の以下の文章は帰納法と演繹法の違いについての今までの話が簡潔にまとめられています。
演繹法とは、ある事柄を前提として、具体的な一つの結論を得る推論方法のことです。これに対して帰納法とは、個別具体的な事柄から、一般的な規則を見出そうとする推論の方法です。
『伝える力』p111より
さて、これで、演繹法と帰納法については終わりにしておきます。2つの違いわかりましたか?ここからは演繹法と帰納法という2つの考え方を活用した文章の書き方について整理しましょう。
文章を書くときは「緩やかな演繹法」を用いるのがおすすめ!
文章を書くときに演繹法と帰納法の考え方を意識すると文章のフォーマットが美しくなり、読み手に取って読みやすく主張のわかりやすい文章になります。では、実際に文章を書くとき、演繹法と帰納法どちらの考え方を用いて文章を書くとわかりやすいのでしょうか?
理想を言えば帰納法です。
事実を積み上げて結論を導くことで、文章の展開が論理的になり主張が伝わりやすくなります。しかし、一つ一つ事実を積み上げていると、文章が長くなり、読み手にとっては退屈な文章になりがちです。また、文章が長いせいで結論がわかりづらくなることも。
これでは、わかりやすい文章を書くために事実を詰め上げることによって、文章がわかりにくくなるという本末転倒な事態に…。いみがわからん。
そこで、『伝える力』で勧めている「緩やかな演繹法」で文章を考えるのはどうでしょう?
どういうことか?これは、基本的に演繹法を用いつつ、状況によって帰納法を取り入れるというものです。
『伝える力』では以下のような解説があります。
まずは、下調べ。そこで仮説を立ててみます。
そのうえで現地に行ってみて、その通りであれば、仮説が立証されたことになります。仮説の通りだったわけですから、報告書、提案書はまとめやすいはずです。ところが、実際に現場に行ってみると、下調べをして、仮説を立てていたこととは違った部分も見えてくるものです。
『伝える力』p113より
仮説を立てて、うまくいけばその通り、うまくいかなければ現場をもとに修正する。演繹法をベースにしつつ、帰納法のように実際の証拠を集めていくという方針です。
これで、文章を書くときの基本的な形はできたことになりますね。
緩やかな演繹法を用いた文章を書くときの大まかな手順
『伝える力』の内容を踏まえると、相手に伝わりやすい文章を書くためには、
1.まずはテーマを決める
2.調べて、仮説を立てる
ということになります。さらに、報告書など現場での内容を含める必要がある文章の場合は、
3.現地に行ったり、実験を行ったり、ヒアリングを行う
4.仮説を照らし合わせる
といった作業が必要になります。文章を書くときに、文章を書くためには何をすればいいのかという方針がわかると、作業が効率よくなりますし、気持ちも楽になります。特に、文章を書くことが苦手な人の場合、事前にすべきことがわかっている方が良いですね。
最後に
今回は、ベストセラー『伝え方』の内容を踏まえて、文章を書くときに役立つ2つの考え方(演繹法と帰納法)を用いた文章の作り方について話をしました。
この記事を書きながら自分もブログを書くときに、どんな方針を持って文章を作ればいいのかを整理することができました。文章を書くための手順をまとめるとできているような、できていないような…。
この記事を読んで一人でも多くの人が文章を書くことに対する恐怖が消えれば幸いです。
あと、『伝える力』はマジでいい本なので、一読すべき。自分の文章力を見直すきっかけをくれた本の一つです。