【参加メリット・注意点】デマンドレスポンスに参加するメリットとデメリット、注意すべき点

この記事はこんな人におすすめ

  • 大学生・大学院生、そして家庭で DR 参加を検討している方
  • DR に参加すると「おトク」なのかを数字で確かめたい人
  • 契約の落とし穴やリスクを事前に知っておきたい中高生の自由研究勢

この記事で学べること

  • デマンドレスポンス(DR)に参加したときに得られる 4 大メリット
  • ベースライン精度・報酬体系・運用制約など 注意すべき 3 つのポイント
  • メリットを最大化しリスクを最小化する 参加前チェックリスト

0. はじめに

再エネの大量導入で電力需給の振れ幅が大きくなる現在、需要側が節電して “発電したのと同じ価値” を生み出す仕組み が注目されています。その代表例が インセンティブ型 DR(ネガワット取引) です。 前回の記事では仕組みと 4 ステップの流れを学びました。本記事では「実際に参加すると、どれだけ得をして、どこに注意すればよいのか」を具体的に解説し、次回の技術編へつなげます。

1. メリットをざっくり把握しよう

デマンドレスポンスのメリットは 経済的メリット環境・社会的メリット の 2 つに大別できます。表 1 に概要を示します。

区分メリット期待効果
経済電気料金削減ピークシフトにより単価が低い時間帯へ需要移動
経済インセンティブ収入ネガワット取引の kW 固定報酬+kWh 成果報酬
社会CO₂削減出力抑制を回避し再エネ活用率が向上
社会系統安定化大停電リスクを低減し社会的信用を向上

2. 経済的メリットを数字で見る

2.1 電気料金の削減

ピーク時間帯の使用量を昼間や深夜へシフトすると、TOU(時間帯別料金) の高単価部分が減り、年間数%の基本料金削減が期待できます。

多数の当社製家庭用エコキュートの一括制御により沸き上げを昼間にシフトするデマンドレスポンスイメージ(PR times より)

2.2 インセンティブ収入

ネガワット取引では、

  • kW 報酬:待機容量 1 kW あたり数百円〜千円/月
  • kWh 報酬:実削減電力量 1 kWh あたり十数円 が支払われます [1]。実証では、中規模オフィスが 30 分で 50 kW 抑制し、1 回で 8 000 円 程度の収入を得た事例があります [3]。

3. 環境・社会的メリット

3.1 CO₂ 排出削減

ピーク時は火力発電割合が高いため、節電は直接的に CO₂ 削減に貢献します。資源エネ庁の試算によれば、1 kWh の節電は 0.555 kg の CO₂ 削減効果 があるとされています [2]。

エネ百科より

3.2 系統安定化への貢献

需要家がネガワットを提供すると、調整力の確保コスト が下がり、大停電リスクも低減します。関西 VPP 実証では、DR 参加で周波数偏差の抑制効果が確認されています [4]。

4. デメリット・注意点を押さえよう

メリットが大きい一方、3 つの視点 で注意が必要です(図 2 で対比)。

デマンドレスポンスのメリットと注意点

電気料金が下がるベースライン算定が難しい場合がある
インセンティブ収入が得られる快適性・生産性が低下する可能性
CO₂排出を削減できる自動制御設備の初期投資がかかる
系統安定化に貢献できる要請不履行時のペナルティ条項に注意
「デマンドレスポンスのメリットと注意点を対比した二列表」

4.1 ベースライン精度

削減量は「想定需要(ベースライン)−実需要」で決まります。

  • 家庭や中小事業者は生活パターンが変動しやすく、過少評価・過大評価のリスク があります [2]。
  • アグリゲーターごとの算定手法を確認し、「自分の負荷特性で本当に報酬が得られるか」事前にテストすることが大切です。

4.2 運用制約と快適性

  • 空調温度変更は 居室の快適性低下 を招きます。
  • 生産ライン停止は 品質や納期 に影響を与える場合があります。
  • IoT 機器導入には初期投資とサイバーセキュリティ対策が必要です [5]。

4.3 報酬体系と契約条項

  • kW 固定+kWh 成果 の割合は事業者で大きく異なります。
  • 要請不履行時のペナルティ(違約金や報酬減額)を必ず確認しましょう。
  • 契約期間途中で解除すると、違約金が発生するケースもあります [1]。

5. 参加前チェックリスト

  1. 負荷特性の把握:年間ピークと使用パターンを把握していますか?
  2. 報酬・ペナルティ:契約条項を理解しましたか?
  3. 制御設備の準備:自動制御や BEMS の導入計画はありますか?
  4. 関係者の同意:家族・社内で合意形成は取れていますか?

6. まとめと次回予告

デマンドレスポンスに参加すると、電気料金削減とインセンティブ収入 を同時に得ながら CO₂ 削減と系統安定化 にも貢献できます。ただし、ベースライン精度・運用制約・契約条項 の 3 点をクリアしないと想定ほどの効果が得られません。

次回の記事では、これら課題を解決する スマートメーター、VPP プラットフォーム、IoT センサー などの技術を詳しく解説します。お楽しみに!

参考文献・リンク

番号URL
[1] 資源エネルギー庁「VPP・DRの活用―ネガワット取引」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/negawatt.html
[2] 経済産業省「ネガワット取引ガイドライン」https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/011_s02_00.pdf
[3] 北陸電力「需要抑制量調整供給 説明資料」https://www.rikuden.co.jp/soden/attach/negagaiyou2.pdf
[4] SII「関西 VPP プロジェクト R3年度実証結果」https://sii.or.jp/DERaggregation03/uploads/B2_kepco.pdf
[5] Eneres Journal「容量市場と DR の関連」https://www.eneres.jp/journal/capacity_market/